FXの売り手と買い手の正体を知る
FXトレードでも流動性が大切
ではFX(為替取引)で価格が全く動かないことはあるのでしょうか?
少なくともドル円やユーロドルなどのような主要通貨で、全く取引がない時間(チャートが動かない)はありません。
ただし、ニューヨーク市場が終わったあとの日本時間早朝の8時ころなどは日本の会社もまだ始まる前で、取引する人があまりいないので取引量が極めて少なくなる(流動性が低い)ことがあります。
FXでは取引が「薄い」などという表現がされますが、要は売り手も買い手もあまりいないので、売り注文や買い注文が出ていないという状況です。
欧米の祝日や、クリスマスなどで為替があまり動かない時も、まさしく取引が「薄い」と言えます。
そんな日は思い切ってトレードをしないことをおすすめします。
理由は24時間土日以外は休まずに動いているFXでは、そうでもしないと気が休まる時(ポジションを持っていない時は気が休まります)がないのと、先程の需求バランスの観点から少しの不均衡(仕掛け的な売り注文や買い注文など)で予想外に大きな値動きになることが多々あるからです。
特にデイトレードを行う上では取引の厚み(売り注文と買い注文の多いとき)のある時にトレードを行うのが勝つための前提と考えます。
FXで売り手と買い手の正体は?
さて、FXで価格が動くには「売り手」と「買い手」が必要で、そのバランスが崩れた時に価格が動くという点はわかりました。
では、チャートの向こう側にいて値動きの原動力となる「売り手」と「買い手」とはどのような人なのでしょうか?
まず、大きくは2種類の市場参加者に分けることができるます。
ひとつは値動きから利益を上げる目的で買うか空売りをする投機筋(スペキュレーター)。
もう一つは、我々のようにFXで儲けようというという参加者からは想像しづらですが、値動きから利益を得ようとしていない参加者で、実需とかヘッジャーという企業などです。
一つ目の投機筋(スペキュレーター)にはつぎのようなものがあげられます。
・投資家の資金運用を行うファンドと言われるプロのトレーダー。
・投資銀行などの金融機関。
・独立系のトレード会社。
などで、それぞれ運用の規模(注文の大きさ)などは違えど、共通して言えることは「値動きから利益を得るためにトレードを行う」ということ。
つまり、「安く買って高く売る」、「高いから売って安く買い戻す」と考える何らかの理由や根拠に基づいてトレードをしているということです。
そして後者は何らかの買わざる理由や売らざる理由にもとづいてトレードを行う参加者です。
例えばわかりやすいようにドル円で考えてみましょう。
・自動車会社などの輸出企業で、海外の利益を国内に戻すためにドルを売って円に変える参加者。
・石油会社や商社など海外から輸入するために支払いを行うために円を売ってドルに変える参加者。
・将来の支払いに備えてある一定の為替レートを維持するためにヘッジを行う参加者。
代表的なごくわずかな例からもわかるように、これらの参加者は数量が非常に大きいという特徴があります。
日本を代表する自動車会社のトヨタなどは「ドル円1円変動するだけで利益が400億円変わる」と言われるほどですから、われわれ個人投資家には想像も出来ないようなポジションをとっていることでしょう。
よく110円や115円などの節目のところには売りのオーダーが並んでいるということを聞きますが、いくら相場の上昇の勢いがあっても跳ね返されて超えられない時などは輸出企業のドル円の大量の売り注文(見えない壁)があって、買い注文を飲み込んでいる状況で価格がそれ以上上がらないことなどがあるかもしれません。
ただし、一般的に大口の注文をさばくとなると一気に売り注文を出せば価格が下がり、売りたい価格で売れなくなる事があるため通常は手口(売り手の情報や、数量など)がわからないように分散したりするので、ますます不可解な値動きになります。
さらにオプション取引という複雑で、われわれ個人投資家には理解しづらい注文。たとえば「110円にはオプションの売りがあるらしい」というように、当事者しか分からない情報や、噂レベルのものも含め、またそれに相乗りしようというような参加者により、価格が複雑に形成されています。
そんなわけで、想像出来ないような取引量がある為替市場で、なおかつ様々な参加者の全ての売り買いの「注文の流れ」を知ることは不可能です。
これは私たち個人投資家はもちろんのこと、投資銀行やヘッジファンドなどでも(もちろん我々より知り得る売り買い注文の情報は多いでしょうが)全ての注文の流れを知ることは出来ません。
それゆえ相場の予想そのものが無意味であるとも言え、長い予想となるとほとんど占いのレベルと考えざるを得ません。
この意見には反論もあるかと思いますが、予想ができない例を一つ挙げてみましょう。
その予想出来ない注文の典型的な例は、2003年ころに行われていた、日本の財務省の円売り介入です。(個人的にはかなり痛い目にあいました)
「ドル円が下がるぞ」と大挙してドル円の売りに行ったものの、円高阻止の円売り為替介入で一気に1円以上円安に動いて、売り手の屍が転がりました。
介入があるかもしれないとある程度構えることはできるかもしれませんが、それを気にし過ぎてポジションを持たなければ円高の流れにのって利益を上げることは出来ません。
(その頃は実弾介入もしばしばあったので、口先介入だけでもけっこう動きました)
ではできることは何かというと、為替介入があってドル円が急騰した時に損切りの注文を置いて大きな痛手を追わないようにリスクを限定することだけです。
その上で、確率的に高い方向へのトレードを行う。
つまるところ確率は高めることは出来ても100%正確に予測は不可能である、だったら予測が外れること=負けることはある程度は回避できないという結論に達します。
なんだかもやっとしますが、さまざまな参加者のさまざまな注文を把握出来ない限りは、完全に予想することは不可能だという考えを持つ。
それがFXというゲームで知っておく大切なルールです。